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第25号

2000年10月16日発行

人+信頼=幸福の方程式

京都府議会議員西田昌司

 今から十数年前まで、「あなたは今の生活に満足をしていますか」という問いかけに対して、日本人の8割の人が「イエス」と答え、自分の生活レベルを「中の上」と感じていた時代がありました。日本人の殆どが今の生活に満足をし、幸せを実感していた時代が、つい十数年前まで確かにそこにあったのです。今、同じ質問をしたらいったいどうなるでしょう。答えはこれとまったく逆で、その殆どが「今の生活に不満を感じ、幸せの実感が乏しい」という回答が返ってくるのではないでしょうか。「バブルが崩壊して不況がこれほど長引いているのだから仕方がない」という人もいるかもしれません。しかし、本当にそうなのでしょうか。私はそうは思いません。冷静に考えてみれば、バブルがはじけて不況が続いているとは言え、私たちの生活レベルは十数年前と比べれば、やはり今のほうが豊かな生活をしていると思います。
 このことからも解るように、経済的豊かさというのは幸せの実感とは必ずしも一致にないということなのです。では、何が幸せを感じるための条件なのでしょうか。この問題を解くためには、昔の日本の社会にあって今の社会にないものを考えてみれば分かります。
 その一番の典型が、人間の信頼関係ではないかと、私は思っております。家族や友人をはじめとする人間関係の絆の強さ、信頼感などは昔と今とではずいぶん違うように思います。また会社に対する忠誠心、いわゆる愛社精神というものも今と昔とでは大違いではないでしょうか。昨今のリストラ騒動によって、会社を辞めさせられた人も、かろうじて残った人も会社に対する考え方は、今と昔とでは、ずいぶん違うものでしょう。私はこうした信頼の絆の希薄化が、私たちから幸せの実感を奪う一番の原因であると思っています。
 例えばこのことを如実に物語るのが、いわゆる老人福祉の問題です。考えてみれば、日本人の平均寿命は男女とも世界一です。また、不況で下がったとは言え、一人当たりの国民貯蓄額や国民所得など実質上これもトップレベルです。また凶悪犯罪が増えたとは言え、やはり世界で一番平和で安全な国なのでしょう。世界で一番長生きをして、世界一金持ちで、安全な国の国民なら世界一幸せのはずなのに、そうは感じていないお年寄りが大勢いらっしゃるのです。この人たちは私にこう言われました。「確かに長生きはした、でもいっしょにご飯を食べる家族も話をしてくれる友達もいない。それがさびしい」と。先ごろ発表された総務庁の調査にも介護を施設ではなく、家庭内で受けたいという人の比率が増えてきているという結果が示されていましたが、このことをまさに物語っていると思います。
 また、青少年をめぐる問題にしても、その原点が家庭にあることは誰もが感じていることです。その中でも特に親子関係の希薄化が大きな問題であると私は考えております。親が子供に自分の大切な価値観を伝えることが出来ない、むしろ伝えるべき価値観がないというほうが正解かもしれませんが、親の最低限こうした務めさえ果たせない人が、今非常に多くなっています。そしてこのような環境で育った子供が親になったら、何も伝えることが出来なくなるのは当然のことです。今こうした悪循環が次々に繰り返されているということなのでしょう。つまり親から子供へ「心の相続」が出来なくなっているということなのです。「心の相続」がなくなれば、家庭が崩壊するのも当然のことでしょう。
 またこの十年、我々地方議会の合言葉は、地方時代や地方分権という言葉でありました。新しい総合計画の中でもこのことが掲げられています。しかし、そうした行政側の取り組みとは裏腹に府民の関心はさっぱりというのが現実です。
 地方の時代、地方分権の時代と言われながら、なぜこのような無関心な状況が生まれてきたのでしょうか。このことに対する真剣な議論と方策が考えられないと、地方分権はまさに言葉倒れに終わってしまいます。
 私はこの原因もまた、その地域に住む人間の信頼関係の希薄化がもたらしたものであると思います。というのも地方分権というのは、「自分の故郷は自分たち自身で守り育てる」という気概があることが前提です。しかし、今の時代、どれだけの人にその気概があるのでしょう。また故郷を思う気持ちというのは一体何処から出てくるものなのでしょうか。私は、故郷にいる家族や友人、また忘れがたい思い出などを抜きにしては、きっと語ることの出来ないものだと思います。そこに家族や友人、思い出がなければ故郷は存在しないのです。
 また、最近はやりのITについても同じことが言えます。ITとはインフォメーションテクノロジーの略語で、コンピュータを使った情報通信技術のことですが、これにより、家族や会社や地域社会、いや国さえも乗り越えて、個人から直接世界と結びつくことが出来る社会が実現すると言われています。そして、個人の可能性が一挙に変わるのだと言われています。そこで今、IT化への対応が日本の経済再生には不可欠なものと、国を挙げての取り組みが行われようとしているのです。
 しかし、ITは文字通りイット、それに過ぎないわけで、問題はコンテンツ、つまり中身の問題です。情報を流す仕組みに価値があるのではなく、流す情報自身が価値あるものかどうかが、本来問題となるのです。ところで、情報に価値があるかどうかは、その情報を得る人が判断する以外にありません。つまり同じ情報でも、或る人には価値の或るものとなり、また違う人には何の値打ちもないということになるわけです。そうすると、情報が価値あるものとして生かされるには、情報を必要とする人に利用される仕組み、「ネットワーク」が必要だということなのです。ITはこのネットワークを構築する方法や技術に過ぎないわけで、ネットワークそのものを作るものではないのです。ネットワークを作るのに必要なものは結局、仲間意識つまり、これも信頼の絆以外の何物でもないのです。この信頼の絆で結ばれていない架空のネットワークに流される情報は、真偽の程が定かでなく、結局は役に立つものではありません。つまりITもそれを現実の力とするためには、信頼の絆の確立ということが大前提になるということなのです。
 今私たちは、「人+信頼=幸福」という誰もが知っていた当たり前の方程式をもう一度思い出すべきではないでしょうか。

(この原稿は平成12年10月5日の本会議での質問の抜粋です)

南区の樹
M・みどり

 昨年の秋から、京都市は、各区の住民が誇りに思い、次の世代に伝えたい「区民誇りの木」の選定を行っています。いわれのある木や地域で親しまれいてる木などを区民から募集し、今年度中には、全十一区の「誇りの木」五百本以上を選定する予定です。
 この事業は、市が平成十二年二月に緑化推進事業を取りまとめた「京都市緑の基本計画」の一つで、市民が身近な樹木に注目する機会をつくることで、緑化推進に向けた意識を高めてもらうためのものです。市民が見ることが出来る健康な木で、歴史や言い伝えのある木や大木・希少な木、花がきれいな木・実が見事な木といった町の誇りとなる木を、上京区、下京区から順次募集し、各区ごとに五十本程度選定し、写真集に収録したり、今後、区の花と木を制定するときの候補ともなります。

 南区においても、この春から九月末まで、「誇りの木」の募集があり、これを機に南区の木を考えてみました。京都で大木を考えたとき、まず神社仏閣が考えられます。南区では、東寺、吉祥院天満宮、久世の蔵王堂などがあり、ここには大きな木も残っています。次に一般的に大木がよく残っている河川敷ですが、南区は桂川、鴨川をはじめ西高瀬川、堀川など京都を代表する河川が流れています。しかし、ここ数年は、鴨川や西高瀬川など散策路など植栽や修景も含めた改修がされていますが、以前は上流域と違い流下能力至上の改修が多かったため、大木はほとんど姿を消しました。そして、町中の道端に一本でも存在感のある大きな路傍樹も、戦前は九条通以南は田畑中心であったためか、市内でも区画整理事業がよく進んでいるためか、はたまた工場・倉庫やマンションが多いためか、ほとんどありません。そして、残っていた大木の一本が、土地所有者が変わりビルが建設されるためか、維持管理の大変さからか分かりませんが、先日も切られて無くなっていて、大変寂しい思いをしました。

 さて、来年からいよいよ二十一世紀が始まります。京都においては、市街地中心部の再生、周辺部の保存、そして南部の開発という街づくりを今後も進めていくようです。街づくりの骨格は行政が行いますが、土地の大部分は民有地であり、町を実際作っていくのは住民です。今後は、開発といっても機能性重視だけではなく、より暮らしよさ、潤い、環境などが重視されると思います。大木をはじめ、緑は街に潤いを与えます。有名な明治神宮の森も木が植えられてまだ百年、されど百年。南区も、今後百年も見据えた新しい街づくりが必要だと考えます。

瓦の独り言
羅城門の瓦

 カラスが鳴かない日があっても、マスコミにIT(情報技術)が登場しない日はありません。政府が日本の経済再建のために掲げており、やれアメリカに立ち遅れたの、産・官・学ともにアメリカに追いつけ、追い越せであり、いつか来た道をまた辿り出しているような気がします。  日本とアメリカではその国民性も、国土も異なるのに同じ土俵に上がろうとしているのではないでしょうか。かつてのモータリゼイションにおいても、国土の広大なアメリカと日本が同じように発展するはずがなかった。歩いて5分もかからずにマーケットにいけるのに車が果たして必要か?  また、目覚しい勢いで発達するインターネットなどの情報技術は、十八世紀の産業革命をしのぐものとも言われており、「国家も企業も個人もバスに乗り遅れないように・・・・・・。全国民がインターネットを使えるように、講習会の費用を・・・・・・」といった声が聞こえてきます。はたして、街角の魚屋さん、うどん屋さんにインターネットが直ぐに必要でしょうか? コンピュータが無ければ商売が出来なくなるのでしょうか? (そういえば、街角から魚屋さん。うどん屋さんが姿を消し、その跡にスーパーマーケット、ファミリーレストランが出来ていますが・・・・・・) 確かにITは生活を便利にしてくれる道具に違いありませんが、ややもすればIT革命なる言葉に踊らされて、物事の本質を見失い、コンピュータだけを追いかけている嫌いがあるのではないでしょうか。「もの作り」において「ものを作る」のは人間で、その手助けをコンピュータがしてくれる。いくら旋盤がコンピュータ化されていても、どのような物を作るかといった創造性や、出来上がった製品の評価は人間がするものです。コンピュータは、「もの作りの手助けをしてくれる道具である」と思っているのは瓦一人だけでしょうか?  うどん屋さんの跡に出来たファミリーレストランの店員の注文取りは、コンピュータによるボタン操作になっています。確かにオーダーミスはなくなりましたが、「きつねうどん」が「たぬきうどん」に化けたうどん屋時代にはそれなりの風情と人情に溢れていたのでは無いでしょうか。

編集後記

 地方に出かけると、新しく広い道路が次々と出来ている。しかし、わたしは傍らの旧道を走ることを楽しみにしている。
 鎮守があり、寺がある。造り酒屋に醤油屋、宿屋があったりもする。何より通りに向かって佇む家並みが美しい。
 わずかにカーブした在所のはずれに、常夜灯と道標が昔から行く先の安全を見守っていてくれた。南区では,西国街道・鳥羽街道等は今なお活気がある。

編集室 松本秀次

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