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第80号

2014年10月15日発行

旧街道の再整備で日本の再生を!

参議院議員西田昌司

東海道と中山道を歩いて分かった日本の実態

 私は、今年の1月にふとしたきっかけで旧東海道を歩き始めました。最初は年内に京都にたどり着ければいいと思っていたのですが、歩き始めると生真面目なのか、せっかちなのか7月20日に京都の三条大橋に到着してしまいました。そうなると今度は旧中山道を歩いてみようということになり、10月初旬に滋賀県の草津宿に到着、合わせて1000キロを超える道程を踏破することができました。日本地図を見ながら、よくぞこれだけの距離を歩いたものだと感慨無量です。
以前より私は列島強靭化政策を唱えていました。その理由は、国土軸の再整備こそが日本全体の発展と防災のためにも必要だという思いからです。この政策を推進するためには、地方の実態をきちんと把握しておく必要があります。
 ここ20年の市場原理主義政策により、政府の予算は削減され続けてきました。また、地方分権のためだと財源や権限が国から地方に移されてきました。しかし、結果は一番大きな地方である東京ばかりにお金が集中し、首都圏だけが栄えることになったのです。このままでは地方が消滅してしまいます。その現実を確認するには、百聞は一見にしかず、先ず自分で一度全国を歩いて見るのが一番だと思ったのが、街道歩きを始めた一番の理由でした。
徳川幕府は東海道や中山道を始め全国に街道を整備し、宿駅伝馬制度を設けました。旅人が宿泊できる宿場を設けると同時に、各宿場の間を飛脚や馬が往復することで、日本中に物資や情報が届けられるようになったわけです。その中でも東海道や中山道は江戸と京を結ぶ、まさに当時の物流の中心であったわけです。その栄枯盛衰の姿をこの目で確かめることにより今の日本に何が必要なのかが分かるはずだと、国会や地元行事の合間を縫って歩き始めたのです。

地方にこそ、国の宝は残っている

参議院原子力問題特別委員長に就任いたしました(第187臨時国会 参議院国会役員集合写真)

 これは出発前から予想された事でしたが、実際に歩いてみると東京を始めとする大都市部では、当時の面影を残すものは殆どなく、むしろ殺風景なその姿に驚かされました。産業道路に吸収され往時の面影が全くないばかりか、自動車優先でそもそも人が歩くことさえ困難な道路も沢山有りました。首都圏や大都市部では、工場やマンションなどの巨大な建物が林立しているわけですから、経済的には発展している地域といえます。しかし、私はそこに日本を感じることができず、無国籍で無機質な荒野を歩いている気がしたのです。
 その一方で、都市部から離れた地域にはかつての日本の姿が残っています。特に、旧街道から離れた場所に国道が通った地域では、経済的発展からは取り残されたかも知れませんが、そこには日本の原風景や往時の人々の暮らしを感じさせるような場所がたくさんあります。特に、東海道では富士山の見える箱根や駿河路、中山道では山々に囲まれた木曽路などは観光地として現在も賑わっています。しかし、そういう有名な観光地以外の所では、建物が残っていても人が住んでいないため、このまま放置すればあと10年もすれば朽ち果ててしまうだろうと思われる場所もいくつも有りました。それどころか、地域にお年寄りしか居ないため、その宿場そのものが消滅してしまうのではないかと思えるところもありました。この10年の間にやるべきことをしておかないと、まさに日本の宝とも言えるものが、どんどん消滅してしまうということです。

人の往来を増やすことが地域再生の鍵

BS日テレ「深層NEWS 〜激論!生殖医療法と家族のあり方〜」に出演いたしました

 では、日本の原風景を残しながら、経済的にも潤い、そこに人が住み続けることができる仕組みを構築するには、どうすれば良いのでしょうか。
 元々、宿場が栄えたのは人の交流の拠点であったからです。人の交流こそが地方再生には必要なのです。物流は新たにできた国道や鉄道などに任すとしても、人の交流を増やす方法を考えなければなりません。
 江戸時代にお蔭参りが流行り、庶民が講でお金を集め伊勢神宮に何百万人もが押し寄せたと言われています。文政13年(1830年)のお蔭参りでは、参詣者数427万6500人と言われていわれていますが、当時の日本総人口は3228万人(1850年)ですから、その一割を超える人が、お伊勢さんにお参りしたことになります。これだけの人が移動し交流をすれば、莫大な経済効果があったことは想像に難くありません。もし今、1億2000万人の1割の1000万人がかつての街道を歩いて交流すれば、街道は栄え地域再生されることは間違いありません。

現代の旧街道は歩きにくい

 しかし、東海道や中山道を踏破して感じたことは、当時に比べて随分歩きにくくなっているということです。まず、道標が整備されていません。旧街道は、道幅も狭く大きな道路が近隣にできると埋没してしまいます。中山道の様に山岳地帯を縦断する街道では、一度道を外れると大変なことになってしまいます。標識がきちんと掲げられている地域では安心して歩けますが、残念ながら街道全域に完備されてはいません。私も、何度も道に迷いながら歩きました。特に山岳地帯では正しい道なのか確信が持てず、不安になったものです。多くの国民に街道を安心して歩いてもらえる工夫が必要です。
 箱根の様に、国道が隣接し茶店も残り旧街道として整備されていれば、険しい山道も安心して登れます。それが、同じ峠道でも、中山道の碓氷峠や和田峠の様に、国道から離れ茶店どころか自動販売機すら無く、未整備の道が延々20キロも続く道では、誰もが安心して歩くことができるとは言えません。私の場合は、それに加え野生の猿や鹿が出てきて肝を潰しました。実際、箱根峠では旧街道でも何人かの人と出会うことがありましたが、碓氷峠や和田峠では誰一人出会うことはありませんでした。また、大木が倒れて峠道を塞いでいたり、雨が降って沢のようになっている箇所もありましたが、江戸時代は中山道も物流の中心をなす国土軸であったわけですから、峠道もきちんと整備されて今よりはずっと歩きやすかったはずです。街道を歩くには茶店の存在が不可欠ですが、今は、その茶店がありません。都市部にはコンビニがその機能を担ってくれていますが、山岳地帯には全くありません。
 私が街道を歩いたのは殆ど真夏の季節でしたが、一番辛かったのは強力な陽射しです。自動販売機でスポーツドリンクを買って水分補給をしても炎天下では文字通り焼け石に水です。かつては街道沿いには松や杉などの並木が両側に植えられ、旅人を強い陽射しから守ってくれたと言います。こうしたインフラが整備されていたからこそ、安心して街道を歩くことができたのです。

地方再生には国の権限強化が必要

東海道五十三次の終点、三条大橋で支援者に迎えられる

 安倍総理は内閣改造で石破幹事長を地方創生担当大臣に指名し、地方の再生が内閣の最重要課題であることを示されています。地方再生はこの20年間ずっと言われてきたことですが、現実には首都圏の一極集中が止まりません。これを実効あるものにするには、今までの様に国の予算と権限を地方に回すというようなやり方ではできません。交通網などのインフラ整備の状態や地理的条件が全く違う地域が多く存在している中、そのような政策をすればますます格差は拡大するばかりです。むしろ、首都圏から財源を吸い上げ地方に配分することが必要なのであり、そのためには国の権限を強化しなければなりません。石破大臣にはぜひともそのことを総理に進言していただきたいと思います。

街道の再生で故郷に人を呼び戻す

 街道を再整備すれば、間違いなくそこを人が歩き出します。人が歩けばお金が動きます。お金が動けば経済が活性化します。経済が活性化すればそこに人が住みます。人が済めばそこに町ができます。江戸時代の宿場町はこうしてできあがったのです。
 江戸時代には人口は約3000万人と言われていましたが、現代の日本はその4倍の人口を擁しています。旧街道を再整備して誰もが歩ける道を再生したなら、多くの人が歩き出すことになるでしょう。特にこれからは仕事を引退した中高年の人口比率がますます増えます。それらの人々の数は江戸時代の日本の人口よりもはるかに多いでしょう。こうした方々が気軽に安心して歩くことになれば地域経済が活性化するのは間違いありません。それは江戸時代の例が証明しています。そればかりか、歩くことにより健康状態も必ず改善されるはずです。それにより医療費などの負担の軽減にもつながるでしょう。これらの金額は、旧街道の整備に必要な予算額よりもはるかに大きなものになるはずです。
 旧街道を整備して国民が歩き出すことにより、国家も国民も故郷も健全化するのです。是非とも地方再生の目玉として実施をしていただきたいものです。

樋のひと雫
− 民族の独立 −
羅生門の樋

 先月にスコットランドの独立を問う住民投票が行われ、スコットランド人は10ポイントの差で英国に留まることを選択しました。投票までの2週間ほどはワイドショーも盛大に取り上げていました。欧州を身近に感じない身には、何か遠くの出来事のようにも感じていました。でも、「独立を住民投票で決める」ということには、驚きと違和感を持ちました。第2次大戦後、「民族自立」の名の下に多くの植民地が独立し、欧州の帝国主義も終焉を迎えました。これには多くの民衆の血が流れました。そして、幾多の建国の英雄も生まれました。我々の世代にとって、「民族の自立」とは、民衆が血と肉体を以て民族の誇りと歴史を取り戻すものという映像が付きまといます。平和裏に、しかも投票権を保障された独立へのプロセスを、テレビ報道で見ることに、戸惑いと民主主義の底の深さを見た思いです。
 一方で、この投票という行為は、第2次大戦後の国連を頂点とした世界秩序をも打ち崩す、新たな世界のカオス(混沌)の扉を開くことになるかも知れません。東西両陣営によってタガをはめられていた世界は、朝鮮やベトナム等での局地戦はあっても、それなりに秩序を維持してきました。その後の経済の発達と社会の進歩は、東側陣営の崩壊を促しましたが、EU経済圏の創出等もあり、大きな秩序の崩壊は免れてきました。
 このような中で、既存の国家の存立すら住民投票に依るという行為は、更なる扉を開けることになるかも知れません。来月にはスペインでカタルーニャ州の独立を問う投票が予定されているそうです。スペインではバスク地方の独立運動は、以前から激しい武装闘争を展開してきました。スペイン政府は新たな火種を抱えたことになります。それも、武装闘争なら直接行動の手段も取れますが、投票を求める民衆には警察権力も軍も動員できかねます。
 また、一見強固に見える秩序は、クリミア半島での住民投票によるロシア帰属を実質的に容認するかの如くです。国連を中心とした世界秩序は、どこかで軋みを生じ始めたように思えます。そして、中国でのチベット族やウイグル族の問題や宗教問題を内包した東アジアにおける少数民族問題など、現政府に対する犯行を「テロリスト問題」で解決してきた国々には、民衆統治の在り方を根底から考え直す機会になるかも知れません。
 ただ、独立を問うテーマが、税の不公平な分配であるカタルーニャの住民投票は、スペイン建国の歴史がどうあれ、豊かな地方の住民エゴが臭います。民衆の自立が住民投票という手段を持った今、世界のカオスを開く扉の鍵がまた一つ増えたように思えます。

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