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MMTでやるべきは反緊縮政策

デフレの原因は、新自由主義による緊縮財政
 そもそもデフレの原因が、新自由主義に基づく緊縮財政であったことは、今や疑う余地もないでしょう。新自由主義の政策としては、アメリカのレーガン大統領のレーガノミクスやイギリスのサッチャー首相のサッチャリズムが有名です。その政策は、いわゆる「小さな政府」や「官から民へ」という言葉に代表されるように、緊縮財政を目指すものでした。
 1980年代後半、米英両国はインフレに苦しんでいました。インフレとは、物価が継続的に上昇する状態で、需要が供給よりも大きい状態です。米英の社会は生産性が低く、それが原因で日独の台頭を許し経済は低迷したと、その当時は考えられていたのです。高福祉国家となった英国の「揺り籠から墓場まで」という言葉はその象徴です。「日独を見倣ってもっと働け」というのが本音でしょう。そのためには経済の構造改革を実行し、社会を効率化することが大切だと思われたのです。
 「小さな政府」や「官から民へ」とは、行政の生産効率を上げることを目的としています。行政の効率化により、政府部門の予算を削減することが可能になります。一方予算を削減した財源で、民間部門には投資減税などを行うことができます。経済資源を非効率な官から民へ移すことにより、社会全体の効率化を図ることが目標とされたのです。そうすれば供給力が増える。その結果、需要とのアンバランスを調整してインフレを抑えることができると考えたのです。また、政府部門の予算が削減されれば需要を抑えることもできます。正に、需要を抑えて供給力を増やすというインフレ抑制がその目的だったのです。

反緊縮のために新自由主義を総括すべし
 一方で当時の日本は、事実上、世界一の経済大国になったと自他共に認めていた時代でした。ところが、その後バブルの崩壊とそれに伴う不良債権の処理により、経済は一挙に悪化しました。当時の日本は、需要不足によるデフレに向かっていたのです。民間需要が減速したのですから、財政出動による需要創造が本来は必要だったのです。
 しかし、当時は、レーガノミクスやサッチャリズムなどの新自由主義的政策がもてはやされていました。これは先に述べた通り、本来インフレ抑制政策ですから、デフレに向かっていた日本には相応しくないものです。
 ところが、東西冷戦の崩壊以後、唯一の超大国になったアメリカの影響力は凄まじく、世界中がこうした政策を見倣うことになりました。しかし、日本は需要減少でデフレになりかけていた時代です。そこに緊縮財政により追い打ちをかけたのですから、日本の凋落は必然です。これが、失われた20年と言われたデフレの根本的原因なのです。

デフレが税収を減らし、それが緊縮を強化させ、更に税収減の悪循環
 バブル崩壊により民需が激減している時に、更に予算を減らして官需も減らせば、デフレが進み税収が減るのは当然です。まずは、経済を再生させることが優先課題であったにもかかわらず、当時は財政再建を優先させてしまったのです。バブル時代、負債を伸ばし過ぎて民間経済が破綻したように、国の債務も大きくなり過ぎれば、いずれは破綻すると考えたのです。現代でも、そのように考えている人が少なからず存在しますが、バブル崩壊直後の時代には、尚更そういう考えが蔓延していたのです。
 そして、増え続ける国債残高を減らすには、プライマリーバランス(基礎的財政収支)を均衡化させるべきと言う最悪の政策目標を掲げたのです。これは、政府自らが自分の手足を縛るもの同じで、必要な財政政策を十分に行うことができなくなりました。財政を優先するあまり、政府の本来の責務である経世済民は、事実上放棄されてしまったのです。

長期計画の削減が先行き不安を招いた
 1989年に高齢化時代に備えての受け皿として、ゴールドプランが策定されました。かつては、インフラ整備だけでなく福祉の分野でも長期計画が作られていたのです。しかし、バブル崩壊以降は、こうした長期計画の策定は皆無になりました。長期計画の策定が予算を膨張させる元凶と見做されたからです。新たな長期計画は無くなり、既に立てた予算は削減されることになりました。
 先に述べた様に、政府のこうした姿勢がデフレを生み出し、税収を減らします。その結果、年金や医療も含め、団塊の世代が超高齢化すれば給付が増え、その持続が不可能になるのではと国民に不安を抱かせています。それが、消費を減少させ貯蓄を増やしデフレが拡大する原因となっています。

社会保障の持続可能性を維持するにはデフレ脱却以外無い
 現在、社会保障の給付の約6割は国民が負担した保険料で、残りの4割が国債発行による国費投入です。この傾向は団塊の世代が超高齢化する20年後にもほとんど変わりません。しかし、国債は政府の借金だから、いずれ返済のために将来世代の税金が使われることになり、その分だけ給付が減るのではと心配される方がいらっしゃいますが、その心配には及びません。
 それを理解するために、国債発行ではなくて税金により賄われていた場合を考えてみましょう。この場合には、社会保障は保険料と税で賄われるということですから、国民が自ら全てを負担し、政府はその再配分をしているに過ぎないことになります。これでは持続性には問題はありませんが、満足のいく給付をもらうにはかなりの保険料や税金の負担が必要になるでしょう。現実に当てはめれば、約120兆円の給付の約4割、つまりは50兆円近い金額を税か保険料で徴収する必要がありますが、この負担に国民が耐えられるでしょうか。
 しかし、実際には、税金ではなくて国債発行で賄っています。これは、国債発行分だけ政府が国民に通貨供給しているということです。それで何か問題があるでしょうか。国民から徴収した税や保険料だけを財源にしている方がむしろ問題では無いでしょうか。
 確かに、団塊の世代が超高齢化により一時的に給付額は増大しますが、その後は逓減することになります。こうした一時的な増加のための財源は税では無く、国債の発行で賄う方が社会の安定のためにも正しいのです。
 厚労省の推計では、社会保障給付の将来見通しは2040年度には190兆円に、GDPは790兆円になると予想されています。国費割合は40%程度で今と変わりませんから、国債を財源にして問題無いのです。問題は、社会保障の給付が増えてもGDPが伸びないことです。
 「MMTは、平成の誤りを検証するツールである」のグラフBは、緊縮財政のため日本が20年間GDPが伸びず、デフレであったことを明確に示しています。米英では毎年の予算額を策定する際、毎年物価上昇率を予想し、それに2%プラスしたものを予算総額としています。ドイツなどはプラス1%の予算査定だと言われています。いずれの国も毎年の物価上昇率に1〜2%を上乗せしたプラス査定をしてきたのです。
 ところが、日本ではゼロシーリングが常態化してきたのです。その差が、正にこのグラフに現れているのです。他国並みに財政出動をしていれば、今頃GDPは750兆から1,000兆円になっていたでしょう。本当に悔やまれます。

デフレ脱却のためには長期の財政出動計画が必要
 民間企業が投資を控えるのは、デフレにより経済の先行きが不透明だからです。こうした時こそ、政府が長期計画を立て、その実行のための予算を毎年計上していく必要があります。そうすればそれが呼び水となり、民間企業も政府の長期計画に同調して投資を拡大することになるのです。「官から民へではなく、官より始めよ」です。
 具体的には、以下のような長期計画を10年単位で計画策定し予算化することが必要です。

国土強靭化などの全国インフラ整備計画
 かつては、国土総合開発計画などのインフラ整備のための10年計画が策定され、東京だけでなく地方にも順次インフラ整備がなされてきました。しかし、現在はこうした計画はなくなり、地方の衰退に拍車をかけました。災害が多発する今こそ、国土強靭化を含めた全国インフラ整備計画を早急に策定し、予算化しなければなりません。          
                          10年 100兆円
 また、全国の新幹線ネットワークを10年から15年で完成させることを始め、全国の高速道路のミッシングリンクを無くすことも必要です。
              新幹線ネットワーク   20年 30兆円
              高速道路        20年 50兆円
              合計          20年 180兆円

少子化対策には企業の内部留保に課税して子ども手当で国民に配分
 また、少子化最大の原因は結婚するカップルが減っていることです。その理由は様々ですが、実質給与が減ったことも主要因の一つです。その原因は、人件費をアウトソーシングするなどのコストカット経営が常態化したことです。このため、企業の業績が上がっているにも拘らず従業員に分配されず、内部留保金が増加し続けています。そこで、企業からの税を増やしそれを子育て世代に分配する仕組みを新たに作るべきです。
       (少子化対策として子ども手当給付 法人税の留保金課税 毎年  4兆円)
                 (3万円/月を高校卒業まで支給可能)

研究開発と人材育成
 世界一の先進技術大国と言われていた面影が、今や日本にはありません。バブル崩壊後の不良債権処理の過程で、日本の企業はコストカット経営に走り、優秀な人材が海外に流出しました。また、国立大学は独立大学法人に組織変更され、事実上民営化されました。その結果、大学の授業料は大幅に値上げがされる一方で、国から交付される運営費補助金は年々カットされています。これでは、次代の人材育成に支障をきたす恐れがあります。研究開発の補助を始め、人材育成のための予算を大幅に上げるべきです。
        国立大学の無償化の恒久措置と運営費補助金の増額   毎年  1兆円
        研究開発支援                    毎年  2兆円

消費税減税と所得税累進課税強化
 また、デフレの根本原因は、バブル以降のコストカット経営による給与削減が消費の低迷を招き、需要を減少させたことです。税と財政出動により所得再分配を強化させるなど、税制の見直しも必要です。特に消費に課税する消費税は、デフレ期においてはデフレを加速させます。
 法人税や所得税は、景気が良いときには納税額が増え、インフレを抑制します。また、悪い時は税負担が少なくなり、デフレを抑制します。景気の変動に対するビルトイン・スタビライザー効果があるのです。一方で、消費税は景気の変動の拘らず、安定した税収が見込まれます。長らく、消費税の方が安定財源として優れていると考えられてきました。しかし、財政当局からすればそうでしょうが、経済全体の安定性を考えれば、消費税より法人税や所得税の方が優れているのです。税制の見直しが必要です。


 以上の長期計画を直ちに策定し、予算措置をする必要があります。そうすれば、民間もこの計画に併せて投資を始めることになるでしょう。
 MMTを活用して、国債発行で上記の様な予算を毎年20兆円程追加すれば、間違いなく日本はデフレから脱却出来るのです。